- 「運転士の見習いって、実際どれくらい大変なんだろう」
- 「どんなことを覚えるんだろう?」
- 「自分にもやり切れるだろうか?」
運転士を目指す道のりを調べていくと、最後に待っているのが見習い乗務です。指導操縦者と呼ばれる先輩と一緒に、実際にお客様を乗せた列車を運転しながら学ぶ期間になります。
先に正直なところをお伝えします。
ただし、大変さの中身は「気合が足りない」といった精神論ではありません。何が大変なのか、具体的に分かっていれば準備できます。
この記事では、現役運転士のフェニオが、見習い時代に本当にきつかったことを5つに絞って解説します。数字も出し惜しみせず書きました。運転士を目指すかどうか迷っている人は、判断材料にしてください。
電車の運転士になるまでの道のり

見習い乗務は、いきなり始まるわけではありません。まずは全体の流れを押さえておきましょう。
- 鉄道会社に入社し、駅員として基礎を学ぶ
- 車掌として乗務員の仕事を覚える
- 運転適性検査・医学適性検査を通過する
- 動力車操縦者養成所で約3か月、座学を受けて修了試験に合格する
- 見習い乗務(約半年)を経て、審査に合格すると運転免許が交付される
フェニオの会社では、入社から運転士になるまで3〜5年が標準でした(年数は会社によって異なります)。
この記事で扱うのは、最後の見習い乗務の部分です。それぞれのステップの詳しい中身は、こちらにまとめてあります。

見習いに入る前の関門になる運転適性検査については、別記事でくわしく解説しています。

フェニオ見習いは、お客様を乗せた本物の列車で訓練するんだ。練習用の電車があるわけじゃないよ
見習い運転士の大変なこと5選
ここからが本題です。フェニオが実際にきつかった順ではなく、見習いが進む順番に沿って紹介します。
線路を覚える
最初の壁がこれです。とにかく覚える量が多い。
覚えるのは、担当する線区の次のような情報です。
- 勾配(上り坂・下り坂の場所と度合い)
- カーブの位置
- 制限速度
- ポイントの制限速度
- 信号機の位置
- 駅や車両基地の配線
- 各駅の番線ごとの停止位置
フェニオが覚えたのは、約50駅・約170km分でした。
ただし、170kmというのは片道の数字です。実際には上りと下りの往復分を覚えます。さらにホームがたくさんある駅では、何番線に入るかによって運転が変わるので、番線ごとに覚えることになります。
つまり、実際に頭に入れる量は170kmの何倍にもなります。
🔶どうやって覚えるのか
フェニオがやっていたのは、この3つです。
- 自分専用のノートを作る(覚えたことを自分の言葉で書き出す)
- 休憩時間や休みの日にYouTubeで前面展望の動画を見る
- 実際にその路線に乗りに行く(お客さんとして乗って景色と情報を結びつける)
勤務時間内の訓練だけでは足りません。休みの日をどう使うかで差がつきます。



担当する区間や駅数は、会社や線区によって全然違うよ。フェニオの場合は50駅170km分だったんだ
速度感覚を掴む
「速度計を見ればいいのでは?」と思いますよね。その速度計が当てにならない場面があります。
雨や雪が降っているときです。車両が滑ると、速度計の数字がぶれたり、0を指してしまうことがあります。実際には走っているのに、です。
だからこそ、運転士は
この感覚は、試験でも問われます。フェニオが受けた試験には、こんなものがありました。
- 速度計を隠した状態で、今の速度を当てる
- 決められた目標の位置で、指定された速度に合わせる
車の運転でいえば、メーターを見ずに「今は時速40kmだ」と当てるようなものです。最初はまったく分かりませんでした。



雨や雪の日は速度計が信用できないことがあるからね。体で覚えるしかないんだ
ブレーキ感覚を掴む
見習いで最も苦労するのがブレーキです。
電車のブレーキは、車のように「踏めばすぐに止まる」ものではありません。
数百メートル手前から効かせ始めて、
🔶「だいたい」では済まない理由
最近の駅にはホームドア(可動柵)が増えています。停止位置が正確でないと、ドアの位置が合わずにお客様を降ろせません。
昔以上に、停止位置の正確さが求められるようになっています。
🔶同じブレーキ操作が通用しない
やっかいなのは、毎回条件が変わることです。ブレーキの効き具合は、次のようなことで変化します。
- 車両ごとのクセ(同じ形式でも編成ごとに違います)
- 天候(雨や雪で滑る)
- 気温
- 編成の両数
- 混雑の具合(お客様の人数で重さが変わる)
- 架線の電圧
つまり、「昨日うまくいったやり方」が今日も通用するとは限りません。その日その時の条件を読んで、ブレーキを調整する必要があります。
ここが、見習いがいちばん壁を感じるところです。そして正直に言えば、ベテランになっても完成しません。



ブレーキは15年たった今でも研究中だよ。奥が深いんだ
異常時の取り扱いを覚える
鉄道は、トラブルが起きることを前提に訓練します。
見習い中に覚えるのは、たとえばこんな場面です。
- ドアが開かない・閉まらない
- ブレーキが緩まない
- ATSなどの保安装置が使えない
- 動物や自動車と衝突した
- 信号機が壊れた
- 大雨・強風
- お客様の急病
- 火災
- 不審者への対応
なぜこれが大変なのか。理由ははっきりしています。
普段はめったに起きないからです。
日常的に起きることなら、繰り返すうちに体が覚えます。しかし異常時の対応は、何年も経験しないまま、それでも完璧に覚えておかなければならないものです。
そして、いざ起きたときは運転席に自分ひとりです。



異常時はその場で自分ひとりで対処しないといけないからね。だから普段から繰り返し覚えるんだ
先生との相性
最後は、技術ではない話です。
見習い運転士には指導操縦者という先生が付きます。ベテランの運転士が、マンツーマンで教えてくれる仕組みです。
ここで知っておいてほしいことがあります。先生は自分では選べません。
🔶相性の問題は「性格」ではなく「情報が伝わらないこと」
相性が合わないと何が起きるか。人間関係の居心地の話だけではありません。
コミュニケーションがうまく取れないと、お互いに進捗状況が分からなくなります。
- 見習い側:どこができていないのか分からない
- 先生側:何につまずいているのか分からない
すると、必要なフォローが入らないまま時間だけが過ぎていきます。これが本当の問題です。
🔶合わなかったときの対処法
安心してほしいのは、逃げ道が用意されていることです。
- 職場の判断で、先生を交代することがあります。相性の問題は現場でも認識されています
- 見習いの同期に相談する。同じ立場の仲間は、驚くほど支えになります
- 上司に相談する。見習いを続けられるように、職場も一緒に考えてくれます
大事なのは、一人で抱え込まないことです。「自分の努力が足りないからだ」と背負い込むと、続くものも続かなくなります。



先生は選べないからね。合わないと感じたら、同期や上司に早めに相談するのが一番だよ
電車の運転士になる方法


ここまで読んで「それでも運転士になりたい」と思えたなら、その気持ちが一番の適性かもしれません。
運転士になるには、まず鉄道会社に入社することが出発点です。見習い乗務は、入社して数年後に訪れる関門になります。
学生の人は、新卒枠での就職が王道です。




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すでに社会人として働いている人にも道はあります。鉄道業界は人手不足が続いていて、年齢やキャリアを問わず運転士候補を募集している会社もあります(応募条件は高卒以上)。


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自分に運転士の適性があるか気になる人は、こちらの記事もどうぞ。


まとめ
見習い運転士の大変なことを5つ紹介しました。
- 線路を覚える:勾配・カーブ・制限速度・信号の位置・番線ごとの停止位置まで。フェニオは約50駅170km分(片道)を、自作ノートと動画と実際の乗車で覚えた
- 速度感覚を掴む:雨や雪では速度計がぶれたり0になることがある。速度計を隠して速度を当てる試験もある
- ブレーキ感覚を掴む:停止位置はぴったり合わせる。ホームドアがあると特に正確さが必要。車両のクセ・天候・気温・両数・混雑・電圧で効きが変わる
- 異常時の取り扱いを覚える:ドアの故障から急病人、火災まで。めったに起きないのに、起きたら一人で対処する
- 先生との相性:指導操縦者は選べない。合わないと進捗が互いに見えなくなる。交代の制度もあり、同期や上司に相談できる
こうして並べると、大変そうに見えると思います。
けれど、5つのうち4つは「覚えること」と「慣れること」です。時間をかければ、必ず前に進みます。残る1つの人間関係も、一人で抱えなければ乗り切れます。
そして、これだけの訓練を積んだ人だけが、あの運転席に座れます。
大変さの中身が分かった今なら、準備は始められます。一歩ずつ進んでいきましょう!
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