皆さんは鉄道の不正乗車と聞くとどんなことを思い浮かべるでしょうか?
最近では鉄道会社も効率化や人員削減などの影響で、無人駅が増えたり車内改札がなくなったりと、不正乗車がやりやすくなってしまった側面があります。
しかし、不正乗車は犯罪にもなりうる大変危険な行為であり、場合によっては100万円を超える増し運賃を請求されたり、警察沙汰になってしまう場合も十分あり得ます。
また、不正乗車と思っていなくても、実はついやってしまっているあんなことが不正乗車だったなんてこともあります。
この記事では総合旅行業務取扱管理者で現役鉄道マンのフェニ夫が不正乗車について
見つかったらどうなるのか
こんなことうっかりやっていませんか?
の3点について詳しく解説していきます。
よくある不正乗車の種類
鉄道の不正乗車には多くの種類が存在します。
- 大人なのに子供の切符を購入して使用する
- 全乗車区間の一部の運賃しか払わない(キセル乗車)
- 切符に書かれている金額や区間を何らかの方法で塗り替える
- 期限切れの切符を使用する
- 他人名義の定期券を使用する
- 改札を不正に突破する
- 駅の正規の出入り口以外のところから駅に侵入する
など他にも多くの不正乗車となりうる手口が存在します。
ここでは全ての不正乗車については説明できませんので、皆さんが良く耳にする
キセル(中間無札)
と発覚した時の請求額が多額になる恐れのある
期限切れ定期券の使用
この2つに絞って解説していきます。
キセル(中間無札)
鉄道における不正乗車でキセルという言葉を一度は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
キセルとは元々は江戸時代に普及したタバコの一種で、両端のみが金属でできており、中間は竹や木を使用して作られています。
その構造が鉄道における不正乗車で最初と最後の安い運賃のみを支払い、中間の運賃を支払わないといった構造が似ていることからキセル乗車と呼ばれるようになりました。
実際の手口としては
- 乗車駅では入場券もしくは一番安い切符を購入して乗車する
下車駅では切符を無くしたと虚偽申告して隣の駅や近くの駅から乗ったことにして精算する - 乗車駅では入場券もしくは一番安い切符を購入して乗車する
下車駅では持っている定期券や回数券を使って下車する
など方法はいくつもありますが、一部の区間の運賃のみを支払って乗車区間に対する正当な運賃を支払わない方法です。
期限切れ定期券の使用
都市部などの自動改札機が整備されている区間では、期限切れの定期券を使用しようとしても自動改札機で弾かれてしまいます。
しかし、自動改札機のない地方のローカル線では下車時の切符の確認は駅員かワンマン列車の運転士が行っています。
このような地方のローカル線でよく行われているのが期限切れ定期券の不正使用です。
駅での入場時や下車時に定期券の有効期間書いてある部分を指で隠す。
係員に見えにくいように一瞬だけ定期券を見せる
中には定期券の日付をペンなどで上から書き直して偽造するといったやり方もあるそうです。
不正乗車が見つかったらどうなるのか
不正乗車が発覚した場合、鉄道会社は
所定の運賃とその2倍となる増し運賃を請求
不正乗車が発覚した場合、その場で所定の運賃と割増運賃を支払えば警察に通報されたり、学校や職場、家族に連絡がいくことは基本的にはありません。
しかし、以下の場合は警察に通報したり、家族に連絡がいく場合があります
不正の内容が悪質な場合
常習性が認められる場合
支払い金額が高額になったり、支払いを拒否した時
このような場合は鉄道会社が警察に被害届を提出したり、支払いを家族にお願いすることがあります。
それでは実施に不正乗車が発覚した場合の増し運賃がどのように計算されるのか、先程の2つの例で解説していきます。
キセル(中間無札)の場合
大阪〜京都でキセル(中間無札)をしたとして解説します。
大阪〜京都の大人普通運賃は570円ですが、大阪駅で一番安い130円区間を購入します。
京都駅ではひとつ手前の駅から乗って切符を無くしたと虚偽の申告をして、130円を精算して改札を出るとします。
このやり方で差額の310円をごまかそうとしますが、大阪からの130円の切符が見つかって、不正が発覚したとします。
この場合は、所持していた大阪から130円の切符は無効として回収。
正規運賃の570円と、増し運賃(正規運賃の2倍の金額)1,140円の
合計1,710円が請求されます。
期限切れ定期券の使用の場合
学生が夏休み前まで使用していた定期券(有効期間7月31日まで)を夏休み明けの9月1日に定期券を購入するのを忘れたのに気づきました。
しかし、そのまま有効期間の切れた古い定期券を使って乗車したとします。
下車時に定期券の有効期間が書かれている所を指で隠してごまかそうとしますが、係員に見つかって不正が発覚したとします。
この場合も所持していた古い定期券は無効として回収し。
正規運賃と増し運賃が請求されますが、定期券の不正使用の場合は増し運賃の計算方法がキセル乗車とは異なります。
定期券の不正乗車の場合は基本的には有効期間が切れた日から毎日1往復乗車したとみなして増し運賃を計算します。
仮に不正乗車を行った区間の普通片道運賃が500円だったとすると
正規運賃 500×2(往復分)
=1,000円
増し運賃 1,000×2=2,000円
合計 3,000円が1日あたりの増し運賃の請求額となります。
さらにここから定期券の有効期間が切れた8月1日から
古い定期券を使用した9月1日までの32日分が加算されるので
増し運賃3,000円×32日分=96,000円が請求されます。
ただし、8月1日〜8月31日まで何らかの方法で(入院証明など)列車に乗っていないことが証明できる場合は請求額が減額される場合もあります。
うっかりこんなことやってませんか?
定期券を貸す・借りる
定期券は券面に
- 名前
- 年齢
- 性別
が記載されています。
定期券は本人以外は使用できない切符なので、たとえ家族であっても他人名義の定期券を使用することは不正乗車となります。
乗る駅も降りる駅も自動改札機の場合では見つからないと思ってつい他人の定期券を借りて乗ってしまう方もいるかもしれません。
しかし、万が一見つかった場合は使用した定期券は無効として回収され
定期券の有効開始日から毎日1往復乗ったものとして増し運賃を請求される恐れがあるので、絶対にやめましょう。
学校を卒業・退学したのにそのまま学生定期券を使用する
通学定期券を使用している人が、通っている学校を卒業したり退学して学生ではなくなったのに、
有効期間が残っているからといってそのまま通学定期券を使用することは不正乗車になります。
通学定期券を使用できる条件は
- 学生であること
- 乗車時は学生証など学生であることを証明できる物を携帯すること
となっています。
卒業間近の学生さんは通学定期券を購入する際は、有効期間が短い定期券を購入するなど、卒業後の有効期間が残らないように注意して購入しましょう。
また、乗車中に学生証などの提示を求められることは滅多にありませんが
万が一学生証などを不携帯で通学定期券を使うと、これも不正使用とみなされますので、注意しましょう。
座りたいから始発駅まで戻って乗る
毎日通勤や通学に使う列車はできれば座って利用したいと思う人は多いと思います。
最寄駅が列車の始発駅でない場合はなかなか座って利用することが難しい場合でも
少し手前の始発駅まで戻れば折り返しで座っていけるという思いから
持っている切符の区間外にあえて乗車することは不正乗車になります。
うっかり間違えて反対方向の列車に乗ってしまった場合は正直に係員に申し出れば精算なしに戻らせてもらえますが
意図的に行っている場合は不正乗車とみなされて、増し運賃を請求される場合があるので絶対にやめましょう。
さいごに
今はどこの鉄道会社も
- 業務の効率化
- コストカット
- 人員の削減
などの名目で無人駅が増えたり、車内改札を行わなくなってきました。
結果的に切符を買わずに列車に乗れてしまったり、精算せずに駅から出れてしまうことも出来てしまっています。
鉄道会社も運賃の取りこぼしを防ぐ費用の方が結果的に高くついてしまうため、
不正乗車が行われていることを知りながら黙認してしまっているという問題点もあります。
だからと言って意図的に運賃を支払わないのは犯罪行為になってしまう恐れもありますので、絶対にやめましょう。
また、不正乗車がバレないと思っている人もいるかもしれませんが鉄道係員の目線から見ると、
不正乗車をしているかどうかは大体わかってしまいます。
係員も忙しく、確信がなければ捕まえることはなかなか出来ません。
しかし、実はバレているケースも多く、目をつけられていることもあるので不正乗車はバレると思った方がいいと思います。