- 電車の運転士はもうオワコンだよね
- 今から電車の運転士を目指してもなれないの?
- 鉄道の将来はどうなるの?
AIや自動運転技術の進歩により、10年後には電車の運転士は必要なくなるといった趣旨の記事です。
これから電車の運転士を目指そうと思っている人は自分はもう電車の運転士になれないのかと心配になってしまいますよね。
この記事では電車の運転士がこれからもなくならない理由と鉄道の将来がどうなるのかを解説していきます。
これから電車の運転士になりたい人は安心して目指していけるようになります。
10年で運転士が完全に必要なくなるというのは非現実的です。駅・車両・線路に多くの設備が必要になるからです。
鉄道の将来はワンマン列車化が進み、設備の整ったところから少しづつ無人運転が行われるようになっていきます。
列車の自動運転とは
まずは列車の自動運転について説明します。
現在一般的な列車には
🟣列車を操縦する運転士
🟣ドアの開閉や車内放送を行う車掌
この2人が乗務をしています。
将来的にはそこにAI(人工知能)やATO(自動列車運転装置)の技術を用いて運転士を必要としない
✅ドライバーレス化
さらには列車に運転士も車掌も乗せない
✅完全無人運転
を実現させようという取り組みです。
自動運転を行うメリット
自動運転を行うメリットとして
🟣ヒューマンエラーを防止できる
🟣人件費を抑えることができる
といった面があります。
人間はミスをする生き物です。
鉄道は安全というイメージが強いと思いますが、過去には人的ミスにより多くの人が亡くなる事故を幾度と発生させています。
その都度対策を講じて安全性を高めてきましたが、人が関わる以上絶対はありません。
また電車の運転士は一人を養成するのにおよそ1年という時間と1,000万円近くのコストがかかります。
その後も運転士のお給料として毎年何百万円もの人件費がかかります。
鉄道会社としてはこの費用は抑えたいと思うのは当然のことでしょう。
自動運転の現状
ゆりかもめやポートライナーなどといった新交通システムでは運転士も車掌も乗務しない
完全無人運転
が行われています。
※異常時や訓練のための運転士は存在します。
その他にも主に地下鉄や新交通システムではATO(自動列車運転装置)を導入しており、列車の発車から停止までを自動で行っています。
運転士は運転席に座ってホームの安全確認と発車の指示のみを行っています。
また、山手線など首都圏の一部の路線や新幹線の車庫への回送などで無人運転を行うための研究開発が行われています。
電車の運転士がなくならない理由3選
ここからはなぜ10年で電車の運転士が必要なくなることがないのかを解説していきます。
運転士を乗せないで列車を自動で運転させるには3つの大きなハードルがあります。
それは以下の3つです。
- 線路の問題
- 車両の問題
- 駅の問題
なぜこの3つのハードルが高いのか、それぞれ解説していきます。
線路の問題
現在日本の鉄道の総延長はおよそ27,000キロ以上あります。
列車の自動運転の実現にはATO(自動列車運転装置)の設備が欠かせません。
ATOには線路上に位置情報や信号の情報を出す『地上子』の設備とそれを受信する車両側の『車上子』の設備が必要です。
また日本には踏切の数が32,000箇所以上あります。
踏切は自動車や人が簡単に入れてしまうため、事故が非常に多く発生する場所です。
自動運転を行うにあたって最も障害になるのがこの『踏切』です。
地下や高架にして踏切をなくすには莫大な時間とお金がかかります。
逆に言えば踏切のない新幹線や地下鉄は自動運転化は比較的容易であると言えます。
車両の問題
日本には現在約50,000両の鉄道車両が存在します。
自動運転を実現させるにはATOの車両設備の設置が必要です。
設備のない車両に対して自動運転に対応できるように車両を改造したり、新しく作り直さなければいけません。
地下鉄の様に同じ車両しか走っておらず、単純な路線であれば自動運転は対応しやすいです。逆に
✅連結や切り離しが多い
✅車両の種類が多い
✅いろんな会社の車両が乗り入れてくる
このような路線では自動運転に対応するのにはまだまだ課題も多いのが現状です。
駅の問題
日本には約9,000もの駅が存在します。
鉄道における事故の発生しやすい場所は駅と踏切です。
駅には列車を利用する多くの人が利用するため、列車の自動運転を実現させるには駅の安全対策も万全にしておかなければなりません。
駅の安全設備には
🟣ホームドア
🟣非常ボタン
🟣転落検知マット
など、さまざまな設備があります。
その中でも自動運転に欠かせないのがホームドアです。
ホームドアがあることでお客様が線路内に転落するのを防ぐことができるので、ホームドアの設置は必須です。
しかし現状の駅にホームドアを設置するのは容易なことではありません。
ホームドアを設置するには
✅ホームの広さの確保
✅ホームの強度の確保
✅ドアの数や位置の統一
✅莫大な設置費用
など多くの課題をクリアしなければなりません。
都市部ではホームドアのある駅が増えてきましたが、それでも全体の1割にも満たない数です。
また、地方の1日に数本しか列車の来ないような路線ではそこまでしてホームドアを設置するのは非現実的です。
さらに最近では駅員のいない『無人駅』が増えています。
列車も無人、駅も無人では異常時などに対応できる人が誰もいない状態になってしまいます。
安全確保の点からもこのあたりのバランスを取るのも鉄道会社にとっては悩ましい部分でもあります。
鉄道の今後
これから日本の鉄道がどんな道を歩んでいくのか解説していきます。
日本は少子高齢化社会です。地方では鉄道の利用者も減り、更なる経営の効率化が図られていきます。
- ワンマン列車化が進む
- 一部の線路はドライバーレス化していく
- 保安要員として乗務する
ワンマン列車化が進む
車掌が乗務しない『ワンマン列車』化がこれからも進んでいきます。
🟣地方の編成両数の短い列車
🟣都市部のホームドアなどの設備が整っている区間
では運転士が一人で乗務する機会が増えていきます。
今まで車掌がやってくれたドアの開閉や車内放送、ホームの安全確認まで全て運転士が一人で行うことになります。
今まで以上に運転士の役割は責任のあるものになっていくでしょう。
一部の路線はドライバーレス化していく
設備の整っている一部の路線では運転士が乗務しないドライバーレス化が進んでいきます。
ATO(自動列車運転装置)の導入が進んでいる地下鉄や新幹線は踏切もなく簡単に外から人が入ってこられません。
そのため、無人運転実現へのハードルは比較的低いく近い将来自動運転が実現して運転士は必要なくなっていきます。
それでも無人運転を行っていて万が一事故が発生してしまうとすぐに会社の信用問題に発展してしまいます。
鉄道会社としては完全な無人運転化は相当時間をかけて慎重にやっていくのでまだまだ時間はかかりそうです。
保安要員として乗務する
新幹線のように駅間が長かったり、都市部の鉄道のように編成も長く多くの人が乗車する列車を完全に無人で運行することは
✅車内秩序の維持
✅異常時の対応
といった観点から現実的ではありません。
列車の運転そのものは自動化されますが、車内でお客様の案内やサービスを行う乗務員は必要です。
これからは何か車内でトラブルや事件が発生した時のために保安要員として乗務員を乗せておくことになっていきます。
また、自動運転のシステムトラブルなどの対応のために手動で運転できるようにある程度の人数の運転士はこれからも必要になります。
まとめと結論
線路の問題
日本の鉄道の総延長はおよそ27,000キロ以上。ATOの地上設備を全てに導入するのは非現実的。
車両の問題
日本には現在約50,000両の鉄道車両が存在。自動運転にはATOの車両設備の導入が必須。車両がバラバラであったり、連結や切り離しの多い路線では導入は難しい。
駅の問題
日本には約9,000以上の駅がある。自動運転にはホームドアの設置が欠かせないが、全ての駅に導入するのはコスト面や条件面から非現実的。
結論
電車の運転士が完全に必要なくなるのはありえない
今から電車の運転士を目指しても全く心配はいらない